活動報告REPORT

10周年記念式典

当財団は、株式会社大塚製薬工場代表取締役社長を務めた亡き夫、故大塚芳満の遺志により2001年に設立以来、医学、歯学、薬学を専攻する徳島県内在住の学生、大学院生ならびに優秀なスポーツ選手にそれぞれ奨学援助を続けてまりました。
この間、将来有用な人材として活躍が期待される多くの奨学生を世に送り出すことができましたことは何よりの喜びでございます。
今般、財団設立10周年を迎えることができましたのも、ひとえに関係各位の格別のご指導、ご支援のたまものと深く感謝しております。心よりお礼申し上げます。
この節目を記念して10周年記念事業を実施することにしました。
記念事業の目玉のひとつとして本県医療の発展に少しでも貢献できればと考え、徳島大学医学部、徳島大学付属病院にそれぞれ医療機器を贈呈させていただきました。記念式典では、この10年に奨学金を授与された方をお招きして、実社会で活躍されている模様をお聞きしました。それぞれの分野で社会に貢献されている姿を拝見し、とても心強く感じるとともに、私たちがこれまで続けてきたことが意義あるものと実感した次第です。
これをひとつの節目として、これからも皆様のお役に立つよう、そして社会に貢献していけるよう、さらに精進してまいりたいと思っております。
公益財団法人 大塚芳満記念財団
理事長 大塚道子
祝辞

このたび、「大塚芳満記念財団」が栄えある創立10周年を迎えられましたことを、心からお喜び申し上げます。貴財団におかれましては、故大塚芳満氏の「ふるさとに貢献したい」とのご遺志を受け継がれ、本県医療の充実、スポーツの発展に大きく寄与されてきたところであり、皆様の崇高な精神に深く敬意を表しますとともに、心から感謝を申し上げる次第でございます。
大塚芳満氏の偉大なご功績、関係者の皆様のご尽力に心から敬意を表す次第であります。
貴財団におかれましては、この度の佳節を契機とされまして、医学分野、スポーツ分野における「ひとづくり」に、なお一層のお力添えを賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
結びとなりますが、貴財団の今後ますますのご発展と、関係皆様のさらなるご健勝、ご活躍を心から祈念申し上げまして、お祝いの言葉といたします。
徳島県知事 飯泉嘉門
祝辞

「大塚芳満記念財団」設立10周年、誠におめでとうございます。法人の目的である「徳島県に在住する医学・歯学・薬学を専攻する有能な学生、大学院生に対し奨学援助を行い、もって同医学・歯学・薬学の発展ならびに国民福祉の向上に寄与し、社会有用の人材を育成すること」に沿い奨学金をいただいた徳島大学生は、この10年で94名にもなっています。あらためて深く感謝の意を表したく存じます。さて、大塚芳満氏は日本で初めて画期的なプラスチック容器入りの輸液の導入に成功され、その質の向上に情熱を注ぎ「輸液のリーディングカンパニー」として名声を不動にされました。そしてこれをスタートに引き続き輸液ソフトバックの開発、さらには最近では高カロリー輸液として、電解質、アミノ酸、ビタミン、微量元素4つをまとめた「エルネオパ」の製品にと発展し、まさしく輸液のトップ・カンパニーとして不動の位置を築かれています。輸液といえばガラス瓶といった常識に挑戦され、日本へ導入された慧眼には驚きを禁じえません。
大塚芳満氏のすばらしい先見の明に感服する以外言葉がありません。我々大学人として教育の必要性、重要性をあらためて深く心に刻みたいと思います。大塚芳満記念財団の益々の御発展を祈念して、御礼とお祝いの言葉とさせていただきます。
徳島大学学長 香川征
祝辞

公益財団法人大塚芳満記念財団がこのたび、創立10周年を迎えられますこと、誠に慶賀に堪えません。心よりお祝い申し上げますとともに、これまでの財団の活動に対しまして、深甚なる敬意と感謝の意を表します。
大塚芳満記念財団は、大塚製薬工場代表の元代表取締役会長、故大塚芳満氏の製薬関連分野及びスポーツ分野でふるさとに貢献したいとの遺志に基づき、ご令室の大塚道子氏(財団理事長)により、平成13年(2001年)7月27日に設立されました。
爾来10年にわたって、徳島県内に在住する、医学、歯学、薬学を専攻する有能な学部学生、大学院生に対し、奨学援助を行い、もって、同分野の学の術発展ならびに国民福祉の向上に寄与し、社会有用の人材を育成すること、また、徳島県内の優秀スポーツ選手に対して援助を行い、スポーツの発展にも寄与し、もって青少年の心身の育成に寄与すること、という財団の目的に沿って活動を続けてこられました。徳島文理大学におきましても、薬学部学生6名と大学院生7名が奨学生に選ばれております奨学生にとって、最終学年において大塚芳満記念財団奨学生に選ばれるということは、経済的な支援を得て学業を全うすることができるだけでなく、大きい栄誉であり、精神的にも大変大きい励みとなっております。
故大塚芳満氏の遺志に基づいて大塚道子氏により設立された大塚芳満記念財団は、最も人間的な活動を展開されている財団であると考えられます。公益財団法人大塚芳満記念財団が、今後も末永く活動を展開され、徳島県の教育・スポーツに貢献されますようお願い申し上げますとともに、関係者の皆様のご健勝を心より祈念申し上げます。
徳島文理大学学長 桐野豊
10周年記念講演 「脳の鍛え方」講師:東北大学 加齢医学研究所 川島 隆太氏
「脳トレ先生」の名で知られる東北大学医学部の川島隆太教授による記念講演会。

私たちは今、超少子高齢化社会に直面している。人口が先細りしていく中で、高齢者の占める割合は確実に増え、日本は様々な世界のトップランナーに地位にある。
一般的に加齢(エイジング)は「老化」現象を意味するがそれはしばしば「何かを失う」「退化する」などのニュアンスで受け止められ、「加齢=マイナス」というネガティブなイメージがひとり歩きしているのだ。しかし私たち定義する加齢は、人の生命の始まりから終わりまでを扱う医学・生物学的上の領域を指し、加齢”軽蔑”の西洋思想に基づくアンチ・エイジング(抗加齢)とは根本的に相容れない。
人口が減少する中で、超高齢社会に求められるのは、人それぞれに年齢を積み重ねながら健やかに、賢く成長していくこと。つまり知的な成熟が期待されているのだ。それは私の研究テーマである「スマート・エイジング」の考え方の出発点であり、ゴールでもある。この研究過程でバランス栄養食に着眼した大塚製薬佐賀栄養製品研究所との共同研究が大変役立った。
脳機能の学習療法により、老化を防ぎ、知的な成長を続けることができれば、間違いなく、人生は豊かになっていく。
それが実感できるためには、多くの人が、知的な好奇心で結ばれる「知縁社会」を構築しなければならない。
賢く、健やかに年齢を重ねていくには、守るべき四つの原則がある。一つは常に認知刺激(頭を使う習慣)を心がけ、さらに適度な有酸素運動を欠かさず、栄養バランスのとれた食事を摂取する。そして近隣との付き合いやさまざまなイベント等に積極的に参加するなど社会性を失わないことである。これが実行できたとき、初めてスマートに歳をとっていくことができる。
特に脳の活性源となる栄養に関しては私たちの調査で朝食を食べた人と食べなかった人では午前中、脳の働きに10~20%程度の差が生じることが分かっている。朝食抜きの生活習慣は子供の性格をだらしなくし、実社会に出ても低収入に甘んじる。このような可能性にがある人が4割にも上っている。
脳の機能と加齢は密接な関係にある。さまざまな神経細胞が網の目のような神経ネットワークを形成している大脳は四つの部分に(前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉)に分かれ、これらを統括する前頭葉の中枢「前頭前野」が、すべての行動と情報を制御する。
その守備範囲は思考創造、記憶学習、意欲・集中力、コミュニケーション力と広範囲に及ぶ。前頭前野が活発に働いているかどうかは、機能性MRIで測定した脳の血流を調べると一目瞭然である。この機能をいかに磨き、高めていくかー成長途上の子供を持つ母親にとっては、食育のあり方と合わせて重大な関心ごとに違いない。
脳を鍛えるトレーニング方法として、遊び感覚でできるストループテストがある。
これはある反応を制御または停止して、他の反応を引き出すテスト。例えばある言葉(黒色で表示された「くろ」)が黄色で示される場合、「黒」ではなく、「黄色」と答えさせる。このようなトレーニングを続けると、記憶力が向上するだけでなく、それに付随して他の能力もアップする。簡単な計算を早く解く学習療法を実行している認知症患者は実行していない患者に比べて、はっきりと認知機能の低下防止、前頭前野の改善が図られている。
誰にでもできる簡単な脳トレーニング方には三つの方法がある。単純な計算、音読、手紙を書くことだ。
手紙はパソコンや携帯電話を使用するのではなく、手書きでないと効果がない。
認知心理学では「作動記憶」と呼んでいるが、これらのトレーニングによって作動記憶が活性化し、思考力、判断力の向上につながっていると考えれる。
認知症の予防・改善には、簡単な計算や音読などのトレーニングが有効である。
脳を鍛えさせることは、加齢とともに低下する脳の機能を回復維持させることである。私が取り組んでいるスマート・エイジングの学習・治療法の開発は、治療困難と言われる認証患者にも光明を与えている。生活の質の高い高齢社会へ向けて今後さらに研究開発の努力を続けたい。